ハンドドリップをするときの、楽しみの一つがお湯をかけたときの膨らみ。
ゆっくりお湯を注いでいくと、こんもりとコーヒーの粉が膨らんでくる様子は楽しくて、ついついじっと見入ってしまいます。
一番、楽しい瞬間かもしれない。
楽しいひと時ではありますが、そもそもこの泡ってなんなんでしょうね。
“アク”と呼ぶ人もいますが、アクってほどのものではないですよ。
今回は、ドリップをするときに出る泡について、紹介していきます。
そもそも泡って何?
コーヒーをハンドドリップで淹れる時にお湯をかけると発生する泡。
お湯を変えたそばから、ぷくぷく出てきて、全体がふっくらと膨らみます。
そもそもこの泡の正体はなんでしょうか?

泡の中身は焙煎豆の中に閉じ込められていた二酸化炭素です。
二酸化炭素は、空気なのでそのままでは目に見える泡にはなりません。
泡の膜を構成する物質が必要ですね。
そして、膜を構成しているのは、焙煎豆のタンパク質や多糖類です。
タンパク質や多糖類に二酸化炭素が包まれ、泡として見える形になっています。
ちなみに、エスプレッソを淹れた時に出るクレマも正体はこの泡ですよ。
成分は一緒です。

とはいえ、泡と一口にいっても、出方は毎回さまざま。
泡がたくさん発生する時もあれば、ほとんど出ない時もありますね。
なんで変わってくるのでしょうか?
それは、二酸化炭素の出方が変わってくるから。
二酸化炭素の出方の違いによって、泡の出方も変わってきます。
二酸化炭素はいつ発生する?
コーヒー豆は、焙煎すると二酸化炭素を発生するようになります。
そのため、焙煎直後のコーヒー豆は大量に二酸化炭素を含んでいる状態。
焙煎直後ほど、二酸化炭素の量は多く、時間が経つにつれ抜けていきます。

時間が経つほど二酸化炭素が減るため、「膨らまないコーヒーは鮮度が悪い」とよくいわれます。
これは事実で、焙煎後時間が経ったコーヒーはもは二酸化炭素が少ない状態なので泡が発生しづらくなっています。
ただし、鮮度が良く焙煎から時間が経っていなくても、二酸化炭素が少ない場合もあります。
例えば、パッケージ内に炭酸ガスを吸収するタイプの脱酸素剤を入れている場合。
また、お湯の温度が低い場合にも二酸化炭素が発生しづらくなります。
状況によりけりなんですね。
逆にいうと、酸素を吸引する脱酸素剤を入れて保管すれば、酸化は抑えられるので、日持ちするようになりますよ。
ただ小分けされているものは基本販売されていないんですよ。
販売されているのは、乾燥剤のシリカゲルぐらいです。(脱酸素剤ではありません)
脱酸素剤ではないので、防げるのは湿気です。
ちなみに、実はコーヒーをドリップする時に使うペーパーフィルターも、とても湿気やすいです。
気がついたら、湿気て変な匂いを発していることも。
ですので、シリカゲルを入れておくのはおすすめです。
焙煎してすぐのコーヒーは美味しくない?
焙煎してすぐのコーヒーは、二酸化炭素がたくさん入っています。
ということは、すぐに挽いて使おうとすると、お湯を注いだときに大きな泡が出てくるってことですよね。
それなら、すぐに焙煎してすぐ飲みたいと思いますよね。

焙煎すぐ飲むこと自体は悪いことではないですが、二酸化炭素はお湯と粉の接触を妨げ抽出の邪魔をする性質があります。
普段は、この二酸化炭素が湿気や酸素からコーヒー豆を守る働きをしますが、焙煎直後のあまりに量が多い時には邪魔になります。
いつもと同じように淹れたはずが、いつもより薄めのコーヒーになりがちです。
「コーヒー豆は焙煎後一晩置いて味を落ち着かせてから使いましょう」とよく言われます。
それは、この二酸化炭素の働きが理由になっているんです。