アラビカ種には、マルティニーク島から広まっていったティピカ、レユニオン島から広まっていったブルボンを起点とするたくさんの品種があります。
ブルボンはレユニオン島に運ばれたコーヒーの木のうち、偶発的に遺伝的な変化(突然変異)が起こったものを育て、品種として確立させたものですが、同じように突然変異からできた品種がいくつかあります。
代表的なものはカトゥーラです。
これはブルボンの突然変異種ですが、早く育ち、実をたくさんつけるという特性があり、中南米における主要栽培品種となっています。
また、アラビカ種最大の実をつけるマラゴジッペも突然変異種です。
異なる品種の組み合わせ(交雑)で新しい品種ができることもあります。
ブラジルで栽培されているムンドノーボは、スマトラ(ティピカのインドネシア亜種)とブルボンの自然交雑によってできたと考えられています。
そのムンドノーボとカトゥーラから、カトゥアイという品種が人工的に作られています。
人工的な交雑によって品種を作ろうとする場合、花が咲く豆に花粉がめしべにつかないようにおしべを抜いてしまいます。
(これを徐雑といいます)
また、コロンビア、イカトゥ、ルイル・イレブンなど、ハイブリッドといわれるタイプの品種も人工的につくられています。
なお、2006年ごろからゲイシャという品種が非常に注目されていますが、これはエチオピアのゲイシャに自生していたものが1960年代に持ち出されたものです。
品種としてはティピカと同じく古くからあるものです。
もっとも有名なのは、パナマ産ゲイシャでしょう。
このパナマのゲイシャはコスタリカにあるCATIE(熱帯農業研究機関)から分けられたもので、モカに似た香りを醸し出したことで注目を浴びました。
ところで、世の中にはたくさんのコーヒーの情報が出回っていますが、「種」と「品種」の区別がついていないことが非常に多いように感じられます。
「品種」は「種」の下位の分類になります。
品種には栽培を目的とした「栽培品種」や特定の地域だけ見られる「亜種」などがあります。
「アラビカ種」は正しい表現ですが、「ティピカ種」は誤りです。
正しくは「アラビカ種ティピカ」や「品種ティピカ」あるいは単に「ティピカ」になります。
アラビカ種の主要品種
品種名 | 起源 |
ティピカ(Typica) | エチオピア 伝搬ルート:インドネシア→オランダ→フランス |
ブルボン(Bourbon) | レユニオン島 ティピカの突然変異 |
マラゴジッペ(Maragogipe) | ブラジルのマラゴジッペ ティピカの突然変異 |
ゲイシャ(Geisha) | エチオピアのゲイシャ |
カトゥーラ(Caturra) | ブラジル ブルボンの突然変異 |
ケント(Kent) | インドにあるケント氏の農園 |
SL28 | タンザニア ブルボン系 |
SL34 | ケニア ブルボン系 |
ムンドノーボ(Mundo Novo) | スマトラ(ティピカの亜種)とブルボンの交雑 |
カトゥアイ(Catuai) | ムンドノーボとカトゥーラの交雑 |
カティモール(Catimor) | CIFC(ポルトガル)ハイブリッドティモールとカトゥーラの交雑 |
コロンビア(Colombia) | コロンビア ハイブリッドティモールとカトゥーラの交雑 |
イカトゥ(Icatu) | ブラジル 薬品処理したカネフォラ種とブルボンの交雑種にモンドノーボを交雑させたもの |
ルイル・イレブン(Ruiru 11) | ケニア カティモールとSL28系の交雑種を交雑させ、SL28を交雑させたもの |
S795 | インド アラビカとリベリカの交雑種であるS288とケントの交雑 |