異質なものを組み合わせてつくったものをハイブリッドといいます。
ガソリンと電気の組み合わせで走る自動車、ハイブリッドカーがよい例です。
本来、植物のハイブリッドとは交雑させたもの全般を指しますが、コーヒーの場合日本では、アラビカ種とそれ以外の種を交雑させたもの(これを種間交雑といいます)を意味するものがほとんどです。
種間交雑の多くの場合は、アラビカ種にカネフォラ種をを交雑させたものになります。
アラビカ種の病害虫に対する弱さを、丈夫なカネフォラ種で補おうとういう発想です。
コーヒーのハイブリッドづくりの主要な方法は、他の植物における交雑種づくりと同じです。
アラビカ種のめしべに、交雑したいものの花粉をつけるだけです。
ところが、これが容易ではないのです。
なぜならアラビカ種とカネフォラ種は染色体の数が違い、両者の組み合わせでは子孫は残せないからです。
この問題点を解決したのが、ティモール島で発見されたハイブリッドティモールです。
ハイブリッドティモールは、アラビカ種と突然変異によりアラビカ種と同じ染色体数になったカネフォラ種の自然交雑種で、遺伝的にはアラビカ種ですが、カネフォラ種の丈夫さを兼ね備えていました。
このハイブリッドティモールとアラビカ種を交雑させて、各国でいろいろなハイブリッドが誕生しました。
ハイブリッドティモールとカトゥーラを交雑させたカティモールやコロンビアが有名です。
同じようなパターンで、アラビカ種とリベリカ種が交雑したものもあります。
インドで見つかったS288という品種です。
このS288とケントを交雑させたものがS795。
これはインドやインドネシアにおける主要な栽培品種となっています。
ハイブリッドづくりのもう一つの方法は、アルカロイド(植物に含まれる成分の一種)を使って人工的にカネフォラ種の染色体数を変え、それにアラビカ種を交雑させるというものです。
ブラジルでつくられたハイブリッドであるイカトゥは、薬品処理されたカネフォラ種にアラビカ種を交雑させたものを起点としています。
薬品処理というと安全性を疑問視されかねませんが、私たちは日常的にその恩恵を被っています。
種なしのぶどうやすいかができるのは、薬品処理によって染色体数を変えて、種子をできなくしているからです。
ハイブリッドは当初、耐病性を重視してつくられていますが、近年ではそれだけではなく、味という私たち消費国側にとって重要な要素を強く意識されるようになっています。