コーヒーの表面が油でテカテカしていることがありますが、その正体はもともと豆に含まれていた脂質です。
豆に含まれる脂質の量は、カネフォラ種と比べてアラビカ種の方が倍近く多いので、焙煎の程度が同じであれば、アラビカ種の方が油が出やすくなります。
「焙煎の程度が同じであれば」と但し書きをつけたのは、油の出方は焙煎の影響を受けるからです。
豆に含まれていた油脂を焙煎時に表面に押し出してくるのは、焙煎時に発生する二酸化炭素です。
二酸化炭素は焙煎が深くなればなるほど多く発生します。
ですから深煎りにした場合などは、焙煎中にすでに油が滲み出ることもあります。
焙煎後しばらくたってにじみ出てくる油は、焙煎豆に残っていた二酸化炭素が豆から出ていく時に一緒に押し出されてきたものです。
二酸化炭素の放出は焙煎後1ヶ月程度続きますが、焙煎直後の数日間が特に多いので、大抵の場合はその数日間で油の滲み方は判断できると思います。
油については、出ていた方が好ましく感じる人と出ていない方が好ましいと感じる人とに分かれるようです。
では、同じ生豆を同じ焙煎度で仕上げる場合に、油を出したり、出さなかったりすることは可能なのでしょうか。
これはある程度コントロール可能です。
強めの火力で焙煎すると二酸化炭素は急激に発生し、激しくハゼが起こります。
このような焙煎では油が出やすい傾向があります。
逆に、低温でじっくり焙煎するとガスの発生もゆるやかで、油の出にくい豆に仕上がります。
ですから、油の出方かた焙煎方法を推測することも可能なのです。
ただし、ガスが出切った後しばらくすると、表面の油が豆の内部にスッと引いていくこともありますので、焙煎後数ヶ月以上たったものに関しては推測は困難です。
油が表面に出ていると劣化が早いのではないかと心配する人もいるようですが、コーヒーの油は比較的長期間変化しません。
それはコーヒーが二酸化炭素のバリアに包まれた状態であること、抗酸化成分を大量に含むことによるようです。
コーヒーが劣化することを「酸化」ということが多いと思いますが、実は油脂の酸化はコーヒーの劣化とあまり関係ないのです。