産地規格だけで流通するコーヒーを「メインストリームコーヒー」とか「コモディティコーヒー」などと呼ぶのに対して、希少性があったり、生産地域、農園、品種などが限定されていたりする特殊なコーヒーを「プレミアムコーヒー」と呼ぶことがあります。
「スペシャルコーヒー」とは、プレミアムコーヒーのひとつです。
スペシャルコーヒーには、すでにメインストリームコーヒーとは異なる一つの市場を形成するに至っています。
スペシャルティコーヒーの特徴は、コーヒーの良さを評価することです。
メインストリームコーヒーでは、異味異臭(コーヒーに出ることが好ましくない風味)の評価に重きを置いたカッピング(風味の評価)が行われ、より異味異臭の少ないものに高値がつけられますが、スペシャルコーヒーについては、より優れているものに高値がつけられます。
スペシャルティコーヒーという言葉が最初に使われたのは、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)によると、1974年のこと。
Erna KnutsenさんがTea & Coffee Trade Journal誌上で使ったとあります。
彼女は特別な微気象(植物に影響を与えるごく狭い範囲の気象)が生み出す際立った風味のコーヒーを称すためにこの言葉を使ったそうですが、これが定義の原点といっていいと思います。
スペシャルティコーヒーの定義にはいろいろなものがありますが、私にはこれが一番しっくりきます。
そして、現在の市場には少し違和感を感じます。
スペシャルティコーヒー市場におけるコーヒーのおいしさを評価する姿勢には共感します。
しかし、スペシャルティコーヒーという言葉は乱用されすぎて、原点にあった本質をなくしかけて、単なるプレミアムコーヒーとの境界が曖昧になってきているように感じます。
それは単に珍しさを意味するものではなかったはずです。
農園名や品種名だけで語られるものでもなかったはずです。
珍しさや農園名、品種名という付加価値と、際立った風味という付加価値とは、もう少し厳密に区別されてもいいように思います。
たしかに希少性や農園名や品種名ふぁけで購買意欲をそそろことはできますし、言葉もおいしさの一部かもしれませんが、それは本質的ではないと思います。
名も無いメインストリームコーヒーの中にも、氏素性がわかっているだけのプレミアムコーヒーよりも優れたものはいくらでもあります。
スペシャルティコーヒーは、微気象や栽培や精選が品質に与える影響、焙煎が品質に与える影響を科学的に理解することで見えてくるように思います。
すでにいくつかの品質の指標を持ってはいるのですが、まだまだたりません。
コーヒーの世界はとても難しく、そしてとてもおもしらおいのです。